時計の無い絵

時計の無い絵と老人は
いつも同じ様に観てる
小さい声でさよなら
僕は涙が出そうになった

上へ風は吹いているかい?
上へ雲が流れて行く様
上へ風は吹いているかい?
上へ雲は流れて

時計は回り続ける
僕や彼女や
そこらにいる猫にも

現実逃避の僕は
いつも何かを探して
目が覚めたら何処に行こうかな
目が覚めて晴れていたら
何を探そうか?

形ある物はいつか消えて
時計の無い絵も
でも何かを残したい
それが人間なんだって言う

そして何日か経ち
手紙が届いた

遥かなり夢や
現実からの嘘や
批判や影
奥の深い所で笑う
不幸への優越感や
卑劣な想いに
こうすれば良かったのに
あいつが嫌いだ
そんな事この絵には無いから

それは只
時計の無い絵
そっとそれを観ていたい時折
そっとそれを観ていたい時より



部屋の窓を開けると
猫の声がするんだ
背広に着替える前に音楽をかけよう
ゆっくりしているようで
心は急いでいるんだ
駅に着く前に靴紐を結び直す
休みの日は晴れるから
バイクで何処へ行こうかな
そんな事考えてたらもう
はは、会社に着いたよ
いつもの安いインスタントコーヒーを飲む
嫌いじゃない別に
好きでもないけれど

毎日は平坦ながらでいい
家に帰ればまた好きな絵を描ける

何か足りない
そんな日は意味を思い出す
時計の無い絵が好きだった理由

あの日のあの時の様に
ガムシャラに描く
そしたら
何より
何より
美しい
絵が描けたよ