風に靡く髪を耳にかけると

小さい頃から幾度と同じ夢を見る

それは

とても綺麗な丘の上

とても流れの早い雲と青空の下

知らぬ女の人と二人で

壊れた瓦礫に登り

そこに座る

いい場所だねって言うと

夢は終わる

名前を聞こうとしたり

ここは何処だっけ?とか

ここ前にも来たよね?って質問も

全部自分が話しだした瞬間に

夢は終わる

ある日

またこの夢を見た

夢の中で思い出し

話さなければ

ずっとこの気持ちのいい場所にいられると思って

無言のまま

流れの早い雲と

知らぬ女の人を見ていた

風に靡く髪を耳にかける仕草は

とても女性らしく

自分と恋人だったり結婚している設定なら

ずっとここにいたいなぁなんて思った

夢を認識して充実していたのは初めてだった

 

少しして

女の人が話し出した

「あなたと私の千年前の記憶、もう千年も過ぎた。忘れたかな?」

 

あれ?

自分は過去の記憶を見ていた?

頭を巡らせると

本当にその女の人との走馬灯が過った

グニャグニャする中

考えに考えて

一言で終わってしまう夢なら

一言で何か感謝してた事や

楽しかった事とか

全部伝えたいと思った

愛しているとは

自信がなくて言えないから

「思い出したよ。また会おう」

って言った

 

そしたら女の人はニコッとして

夢は終わった

目覚めたら心臓がバクバクしていて

とても幸せな気持ちだった

それから

もうその夢は見れなくなった

 

別れ際にさよならは寂しすぎるから

人はそれを隠すのだけど

それは優しさと分かっていても

とても胸が苦しいんだ